第四回 スペシャルインタビュー 前編


かづきれいこ
フェイシャルセラピスト、リハビリメイクの提唱者
REIKO KAZKI 主宰、公益社団法人 顔と心と体研究会 理事長

【略歴】 大阪生まれ。
 メイクを通じて女性の心理を追究。また医療機関と連携し、傷跡ややけど痕のカバーや、それにともなう心のケアをおこなう“リハビリメイク”の第一人者。
生まれつき心臓に穴が開いていた(ASD)ため、冬になると“顔が真っ赤”になる悩みを持っていたが、30歳の時にそれがわかり、手術し完治。それを機にメイクを学び、活動をスタートさせる。老人ホーム等へのメイクボランティアにも力を注ぐ。
 リハビリメイクを通じて、多くの人が抱える「顔」の問題にメンタルな面からも取り組むフェイシャルセラピストでもあり、またその養成に力を注ぐ。 広い世代の雑誌やテレビなどでも活躍。また、学会誌にリハビリメイクに関する論文を発表し、メイクの価値を高めるために全国で講演活動を実施している。
 2000年に発足した「顔と心と体研究会」は公益社団法人となり、2018年2月にメンタルメイクセラピスト資格認証事業の開始に関して公益認定を受け、現在に至る。

  • この度は、池坊いけばなluxeの特別企画、エグゼクティブのいけばなSpecialインタビューにご登場くださいまして誠に有難うございます。
     今回、女性メンバーの初登場ということで、美容界に新しい風を吹かせるかづきれいこさんにご登場いただきました。
     華やかでとてもパワフル、笑顔が大輪の花の様な方、フェイシャルセラピストとして全国で講演、ワークショップと大活躍していらっしゃいます。
     今回インタビューでは、お稽古とは違う視点で、かづきさんにいろいろお伺いしたいのでよろしくお願いいたします。
  • 最初に、かづきさんは先月でお稽古を始められ二年が経ちました。お忙しい中にも、華道を始めてみようと思われたのはどうしてだったのでしょうか。
  • かづききっかけはインプラントの再手術でした。術後、自宅での療養中に、体はシャンとしているけれど外出できず、その時間がもったいなくて「そうだ、お花をやろう」と思ったのです。
     20年以上も走り続けてきたのでタイミングが無かったのもありますが、私自身、仕事が最優先で昔から楽しいことや遊びをセーブしちゃうクセがあるんです。でも60歳を越えてから、ここまで走ってこられたから少しくらい自分のための時間を作ってもいいのかな、と。
     私、本当は趣味人なんです。お花はもちろんですが、絵も、歌もダンスも、料理も大好き。今回、十数年以上のお付き合いさせてもらっている日本華道社の渡部元編集長とのご縁でお誘いをしていただいたのは、いい機会でした。
  • 確か、お身内にも華道をされていらした方がおいでになったような
  • かづきはい。私の祖父が未生流の師範をしていました。小さかったのであまり覚えてはいないのですが、いつも庭にはたくさんのお花が咲いていて、よく学校に花を持たされていました。花だけでなく山椒や茗荷など食べられるものもありましたよ。 小さい時からお花は身近でしたね。
  • やはりDNAなのかもしれませんね。
  • 実際に花を生けてみて印象はいかがでしたか。
  • かづきお花のエネルギーって凄いですよね!これは、もっと一般の方々に知って欲しいです。私はお花を自宅でも会社でもずっと絶やしたことが無いくらい大好き。30歳のときに心臓の手術をしたときも、その病棟はお見舞いのお花が大丈夫だったので、たくさん病室に生けていました。病院独特の匂いを消してくれて、華やかですし、病気も忘れられます。
     お花って長持ちはしないけれど、その瞬時のエネルギーは宝石と同じ価値があると思います。女性に限らず男性も、ケーキをひとつ買って帰るのもいいけど、花もひとつ買って欲しいですね。

  • 美への感性はメークもいけばなも相通じているものがあるのでしょうか
  • かづき先ほども話したように、小さい頃から慣れ親しんでいたので、自然に身についていたのでしょうか。 でも本当に、花も料理も、メイクも全部似ているような気がします。
     パッと見たときの感覚というのが、共通していますよね。 色の出し方、ここに何を入れたらいいかなど、とても似ています。感覚というのは昨日今日ではなくて日々培われているものだと思います。
     あと、私の欠点でも長所でもあるのですが、生けるのがとても早いんです。一瞬の感覚で、どんな花器でこんな風にというのが見えているから、それが消えないうちに早く生けたいのです。 料理もメイクも何でも早い。この人にはこの眉毛、といったパッとした感覚です。眉毛をきれいに描くのと似合っているのとは違いますよ。お花もそうで、きれいに生けるのと、いきいきしたように生けるのとは違うと思っています。
  • よくかづきさんが「花が笑っているようにいけてあげたいの」と仰る言葉は、メークをしてさしあげる方への愛情と同じ気がして胸が打たれます。
    実際にかづきさんがリハビリメークを提唱されこれだけ認知されてきたのには、大きな信念がおありだと思うのですが。
  • かづきそうですね。
     私は、メイクをする時、美人であるとかは全く関係ないんです。生まれ持ったものというのはその時の条件であって、そこから作り上げるもの(顔)は自分自身じゃないですか。自分で顔を素敵にしていったり、辛そうな顔にしたり、悲しそうになったり。 だから私は顔を、いつも笑っているようにメイクしたいと思っています。
     ポリシーは、『元気で笑っているような顔』。 この人を笑っているようにしようかな、というのが原点です。 私、百合が大好きなのは、花開いた時に突然パッと笑うところです。突然開くこの花が好き。顔も一緒ですよ。
  • 素晴らしいです。だからこそ、全国にたくさんのかづきれいこファンがいらっしゃるのですね、納得です。では、華道を始めてみて何か変わったことや、気づいたことなどはありましたでしょうか。
  • かづき以前にお花を習ったこともあったのですが自己流だったので、これでいいのか、これが正しいのかな、と悩む時もありましたが、今回森先生に指導していただいて、これでよかったと気づけたことは大きかったです。 森先生は独自の生け方を見ても特に否定もされることもなく、素晴らしいと言ってくださって。
     多少の手直しをしてくださるときは、その花がまたパッと生きるんです。 その感覚というのが、またプラスになり、こういった上の感覚もあったのだと学ばせていただけて、とても新鮮でした。
  • よかったです。かづきさんが超多忙の中を一月に一回お稽古してくださることはとても光栄ですし、かづきさんからもいろいろ貴重なお話を伺えて自身の刺激や学びとなっています。感謝の気持ちでいっぱいです。
     このようなご縁から昨年より、毎年5月に開催されます日本橋三越本店での「池坊展」の特別コーナーとして設えられた「経済界の華道人」コーナーにも二年連続してご参加くださいました。人数は少なくても日本の経済界で活躍される女性経営者、美容界のカリスマとしていけばな作品を展示されたわけですが、ご感想はいかがでしたか。
  • かづき貴重な機会を頂戴し、本当にありがとうございました。自分では「経済界」とはとてもおこがましいのですが、今回一次展の1-1、ましてや会場の入り口近くという場所もいただき、宗匠ともお会いさせていただけたことは光栄極まりません。
     これからもっともっとご恩返しできたらと心から願っております。
  • 実際に池坊の花展を体験して、池坊についての見方は変わりましたか。
  • かづきはい、とても変わりました!
     もっと二次元的なもの、昔古来の床の間に合うようなものだと思っていましたが、前日に準備に入らせてもらったら、松などの大きな木をまるで突貫工事のように創りあげられる姿はとても男性的で、私にも合っているなと思いました。 これからがとても楽しみです。
  • 花展期間中は、同じ三越本店の三階にございます、かづきれいこサロンと三階エスカレーター前にもいけばなを装花しました。私と社中の生徒もお手伝いをさせていただき、とても感激しました。
     ファンの皆様や周りのスタッフの反応はいかがでしたでしょうか。
  • かづきおかげさまで生徒さん始め、三越の方にも喜んでいただけました。吹き抜けになっているので、上からも見えるのですが、そこだけライトがあたっているように見えたとおっしゃってくださって。私のお客さま以外の方も立ち止まって見ていただく機会になれたので、これからも続けられたらと思っております。

  • そうですか。やはり、客観的に自分のいけばな作品を見られるのはとても勉強になりますね。また、新たなコミュニケーションのきっかけとなる気がいたします。ご活躍の一助になれば嬉しいです。

    美容界の中でも、かづきれいこさんの美容目的は独自のものをお持ちで、医学的にも実証されるものです。公益社団法人を立ち上げられてから、多くの医療機関と連携され、またご自身も形成学等の専門家としても活動を裏付けていらっしゃいます。
    メークという力で、人の顔も心も変え、その繋がりを社会貢献にも広げていく。その真摯な姿勢は若い女性からも支持され、いけばな教室の生徒さんのにもファンが多くいます。

    インタビュー後半は、かづきさんの夢や、新しく始まったメンタルメイクセラピストのことについてお伺いしながら、未来の美、豊かな人生を過ごすためのヒントを教えていただければと存じます。

    皆様、どうぞお楽しみにお待ちください!
    前編 以上